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「コンセプトありき」の旅館づくり

篠塚:金井さんの中で、有馬という地に対しての思いはどのように芽生えていったのですか?

金井:最初は否定的だったのですが、有馬に帰ることになりまして、そうするとそれまで嫌だった場所を、今度は自分が住みたい場所にすればいいと考えたのです。御所坊は20室ほどの小さな宿ですので、有馬に来られる観光客のうち10%に御所坊を選んでいただけたら、毎日満室になるわけですよね。そう考えれば思い切ったことができます。ですので、あえてニッチなマーケットに進んでいったわけです。

篠塚:自分が否定的に思っていた場所だからこそもっとよくしよう、というのが根源だったのですね。その中で、御所坊のブランドコンセプトはどのようにして作られたのでしょうか?

金井:御所坊では、ターゲットとするお客様のイメージを固めるうえで、ある美術作家の方をペルソナに据えています。御所坊はご飯を固めに炊いて出しているのですが、それはペルソナの美術作家の方の好みに合わせているからです。何かを検討する際は、ペルソナに照らして答えを考えるようにしています。

陶泉 御所坊 陶泉 御所坊 陶泉 御所坊

篠塚:100人なら100人、すべての方の好みに合わせるのではなく、御所坊が大切にしているコンセプトやペルソナ像から判断されるのですね。

金井:はい。だから必ずしも100人が満足するものではありません。しかし、その方に合えばものすごく価値のあるものになりますよね。そうした仕掛けを、ご飯だけでなく、他にも2つ、3つと共感を得ていただけたら、お客様には御所坊に宿泊することに価値を見出していだだけます。御所坊のデザインというのは特に尖っているのですよ。好き嫌いが激しいわけですが、それを上手く使いこなしているとデザイナーの方は思ってくださるのです。だからこそ、日本のそうそうたるデザイナーの方にもご来館いただけるのですね。

陶泉 御所坊

篠塚:確かに、館内全体にすでに独特の雰囲気がありますね。他にも工夫されている点、振り切ってやられている点はありますか?

金井:もともとあった建物を改装すると、無駄な空間が生まれてしまうのですね。それをどうしようかと頭の中で考えていたときに、これをあそこへ置いたら似合うのではないかと思って買い求めたりしたものが結構あります。御所坊はそういうやり方で作りました。既成品を寄せ集めて作れる世界ではない。ものを作り上げていく楽しみというのが、旅館経営の醍醐味だと思います。

陶泉 御所坊 第15代目当主 金井 啓修

陶泉 御所坊 第15代目当主

金井 啓修

1955年、有馬町生まれ。1981年に御所坊を継ぎ、15代目 金井四郎兵衛を襲名。以来、有馬の街全体を巻き込んだ地域活性化に積極的に取り組んでいる。2010年、国土交通省「観光カリスマ」に指定2016年に有馬温泉観光協会長に就任。