Welcome to Relux

「孫に一番いいものを」から生まれた、食へのこだわり

陶泉 御所坊 陶泉 御所坊

篠塚:ものを作る中で、旅館はそれ自体が作品であるということですね。ここまではデザインや設えへのこだわりについてのお話でしたが、農業法人を立ち上げられたとも伺っています。食へのこだわりには、どんなきっかけがあったのでしょうか。

金井:農業法人は10年ほど前に立ち上げました。最近は私も農業をやろうと思い立ち、農業法人のメンバーの農家の方達に教えてもらっているのですが、そのきっかけは私の孫です。孫がご飯を食べているのを見ているとき、ふと、「孫の食べるものは私が作ろう」、「孫には一番いいものを食べさせてあげたい」と思ったのです。そこで、御所坊を日本一のお子様ランチを食べられる旅館にしようと考えて、食によりこだわりを持つようになり、自ら農業をしています。

篠塚:お孫さんのことを考えながらも、旅館に関連した事業展開につながるのですね。やはり、金井さんの取り組みの中心に旅館があるという印象です。

金井:なんでも旅館につながっていますよね。例えば、フレンチフライにするにはどの芋がいいのか、コロッケにはどの品種がいいのかというのを決めて、孫に食べさせるのだから売上云々ではなく一番いい種芋を育てようと考える。その芋を20kgずつ、3種類植えるにはどれくらいの畑がいるのか、そこから逆算して畑を手配する。すると、孫のことを考えながらも、自然とお客様に一番いいものをご提供できるようになりますよね。そうした流れから、次は兵庫県の伝統野菜を集めようということで準備しています。

陶泉 御所坊

篠塚:御所坊では、兵庫県内の伝統野菜のみを使われているのですか?

金井:大量生産されているものではなくて、その土地で生き残っているものをうちの農業法人で生産する、もしくは仕入れさせていただき、それを使った料理を作っていきたいと思っています。

篠塚:日本でも稀有といいますか、そこまで新しいものを取り込む旅館は少ないと思うのですが、金井さんのモチベーションになっているものは何なのでしょうか?

金井:旅館の主人は「や!どや!」と言えるものを出さなければいけないと思うのですよ。宿という言葉は「しゅく」と読めるでしょう。宿(しゅく)というのはエリアを指すのですね。宿(やど)は、ひとつの建物ではなく「宿(しゅく)」なのですよ。有馬というひとつの宿(しゅく)、エリアの中で御所坊の歴史を考えてみると、有馬の湯守りではないかと思うのですね。世界的にも珍しい温泉の湧く、日本でもトップレベルの歴史ある温泉地のルーツであると。それくらいの自負でやれば、少々のことは乗り越えられるのではないかと思うのです。

陶泉 御所坊 第15代目当主 金井 啓修

陶泉 御所坊 第15代目当主

金井 啓修

1955年、有馬町生まれ。1981年に御所坊を継ぎ、15代目 金井四郎兵衛を襲名。以来、有馬の街全体を巻き込んだ地域活性化に積極的に取り組んでいる。2010年、国土交通省「観光カリスマ」に指定2016年に有馬温泉観光協会長に就任。