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おふたりさま専用の宿ができるまで

塩川:そこから旅館の運営にたずさわるまでは、どういったプロセスがあったのでしょうか。

黄木:当時、叔母が還暦を迎えていたり建物も老朽化していたので、これからのすみれ荘をどうするかという検討チームをつくり、私自身も関わることになったのです。そのときには「金剛閣」での仕事をやめ、すみれ荘のフロント業務など支配人のような立場で叔母をサポートする役割にまわっていましたので、「またすみれ荘に戻って来てしまった」と思いましたね。ただ、検討チームはつくったものの、誰が継ぐかが決まらずに漠然と話が進んでいたのです。そんなとき、実家の顧問からの紹介で飯野賢治さんという方に出会い、旅館づくりのテーマについてアドバイスを頂き、「綾子さんがこの旅館を継ぎませんか?」と声をかけていただきました。私の人生が変わっていく瞬間でした。

塩川:継ぐ人がいないためにまとまりなくお話が進む中で、「継がなくてよくなった」とも思っていたことがある黄木さんに、白羽の矢が立ったのですね。継ぐことを決心された2003年から2016年まで、激動の13年間を振り返ってみていかがでしたか?

黄木:旅館を継ぐにあたっては「今後、旅館をどうするのか」ということが1つとても大切なことでしたが、そのときに飯野さんが「綾子さんがやるのだったら綾子さんがやりたい旅館をやった方がいいですよ」と、みなさんの前で言ってくださったのです。それまで囲炉裏とか、田舎らしさとか、各人それぞれのイメージでつくったシナリオというのがあったのですが、やりたい旅館をやった方がいいと飯野さんが言ってくださったことがきっかけで、私なりのコンセプトづくりをはじめました。

塩川:そこから今の時の宿 すみれへの道筋ができていくのですね。「おふたりさま」というコンセプトづくりは、どのように進められたのでしょうか。

黄木:飯野さんに教えていただいたのは、「私らしい宿」をつくるということと、お客さま像を決めるにあたって、誰にどうなって欲しいか、滞在を通して何を感じていただけたら嬉しいかを考えることでした。そのときにイメージしたのが「大切な人とふたり」だったのですね。このコンセプトを思いついたのは、私を含めて、どんな人も大切な人と支えあったり絆を深めあったりして楽しい時間を一緒に過ごすことで、日々の中にしあわせを感じるのではないだろうかということ。子どもたちとの時間がとても大切だと思っていた時期ですし、私自身が離婚を経験して感じていたこと、そんな時間を宿として提供できたらいいなと思ったのです。忙しい中やっと取れたお休みをふたりで過ごす方や、嫁いでから一緒にいられなくなった母親とふたりで旅行をする女性などをイメージしました。愛があるからこそ仕事や普段の生活が楽しく、感謝の気持ちを持てるということがありますよね。

塩川:そのようにしておふたりさま専用旅館というイメージが生まれたのですね。

株式会社黄木コーポレーション 株式会社黄木コーポレーション

黄木:例えば、時の宿 すみれにはテレビも時計も置いていません。日常から離れてリラックスしたい方がお客様像なので、あえて置かないのです。時を忘れながらもふたりのときを刻んで欲しいという願いです。調度品もすべて2つずつで、ふたりで選んでもらう酒蔵、次に来た時に別のお部屋も楽しめるようにデザインの異なるお部屋もつくりました。ふたりにちょうどいい湯船の大きさなども設計の先生と相談しながら決めていきました。

塩川:徹底しておふたりさまに喜んでいただくことをコンセプトに宿づくりがはじまったのですね。雰囲気のほかに、米沢牛に特化したところも非常に特徴的だと思うのですが、そこにある思いをお聞きしたいと思います。

黄木:旅に出れば、その土地の美味しいものを召し上がりたいという方が多数だと思うのですが、米沢といえば米沢牛ですね。実家がお肉屋ということもあり、当時の料理長と相談してお肉づくしの料理を考えたのです。最初はお肉づくしは重たいのではないかと思っていたのですが、お肉を知り尽くした料理長が「大丈夫です」と言ってくれましたし、試食会のときに重たさどころか、むしろサッパリと食べられるお料理に「これはいける」と確信しました。

塩川:目の前の鉄板で米沢牛が焼かれるというライブ感も、「おふたりさま」にとって特別な場になりそうですね。

黄木:宿をリニューアルする際にさまざまなレストランへ足を運び、研究しました。スタッフも料理について勉強し、1つひとつの部位やお料理の特徴を細かく説明します。ここでの滞在は、お部屋、ラウンジ、お風呂ではリラックスしていただき、レストランでは少し緊張感も感じていただき、最後にラウンジでデザートを召し上がっていただく。これはすべておふたりの特別な時間のためにご用意していることなのです。

株式会社黄木コーポレーション
株式会社黄木コーポレーション 代表取締役/女将 黄木 綾子

株式会社黄木コーポレーション 代表取締役

女将 黄木 綾子

山形県米沢市出身。東京観光専門学校を卒業後、「健康の宿すみれ荘」に勤務。その後、東京勤務、渡米を経て1998年米沢に戻る。レストラン「金剛閣」での勤務の後、「すみれ荘」で支配人を務める。2005年3月、(株)黄木コーポレーション代表取締役に就任し、同年10月「時の宿 すみれ」をリニューアルオープン。

Tokinoyado Sumire

Tokinoyado Sumire

山形県 > 米沢・置賜

コンセプトは、「おふたりさまに喜んでいただく」。最高級の米沢牛や湯の沢温泉を、大切な人とふたりで楽しむための一軒宿です。