Welcome to Relux

地域全体で稼いでいく「黒川一旅館」の理念

塩川:質を上げることにシフトする過程で見えてきた成功事例や課題点はあったのでしょうか。

北里:厳しい言い方になるかも知れないのですけれども、当時は惰性の力で物事が進んでいた期間だったのではないかと思います。その頃は父が組合に出席していたのですが、中にいる人間としては「どういう方向性で進んでいくのだろうか」ということが見えなかったのです。

塩川:それが平成12〜15年の頃の流れで、そこからの後半10年にかけては、それまでと異なるフェーズに入っていくのでしょうか?

歴史の宿 御客屋

北里:フェーズとしては国際化、インバウンド需要が大きいですね。8〜9年前に韓国からのお客さまの波が来ました。最初は「うちは海外のお客さまを入れなくてもいい」と言っていた旅館が、数年でどうしても受け入れざるを得ない状況になっていったのですね。予約の窓口が多様化し、対応せざるを得なくなっていったのです。

塩川:そこでまた黒川温泉のあり方がまた議論されてくるのですね。この10年、20年を考えると、まず国内の中でものすごく盛り上がった時期があり、そこから海外のお客さまがいらっしゃるようになり、どう進化していくかを絶えず考えざるを得ないような状況だったのではないでしょうか。

北里:そうですね。東京オリンピックを控えインバウンド政策が語られるようになりました。そこでは日本人の人口が減るからインバウンドのお客さまを大勢呼び込もうと言われますが、私は逆に、全体的なお客様の数は取りに行かなくてはいけませんが、黒川温泉はあくまで国内外問わず個人のお客さまにご予約いただけるように、質を担保して付加価値を提供していきたいと考えています。それは旅館業界の人間だけでは成し遂げられませんので、地域全体と稼いでいくというふうにならなければいけませんね。

歴史の宿 御客屋

塩川:黒川温泉では700名前後のスタッフで30万人くらいのお客さまを受け入れられていると伺っています。そうすると、宿泊施設のもつ歴史と同様に、お客さまにも何世代にも渡ってお越しいただけるようなまちづくりをしなければいけないという危機感や、未来感を持ち合わせていらっしゃるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

北里:御客屋は私で7代目なのですが、今の年頃になってようやく、父母が旅館を残してくれたありがたみや、地域の先輩方が守ってきてくださったつながりを感じるようになりました。「黒川一旅館」(黒川温泉全体が一つの旅館であるという考え方)という地域理念のもとで行動を起こしてくれたのは、私たちの先代である世代です。私たちの世代はその具体例をつくっていくことが役目だと考えています。地震(2016年4月14 日に発生した熊本地震)のあとにいろいろな物事を考えて整理しているのですけれども、「黒川一旅館」から「黒川一ふるさと」へ、つまりお客さまも含めて地域内外のさまざまな方々が黒川温泉の未来に関わるというプロジェクトを起こしていこうかなと考えています。

歴史の宿 御客屋 七代目御客番 北里 有紀

歴史の宿 御客屋 七代目御客番

北里 有紀

熊本県阿蘇郡南小国町出身。21歳で実家の御客屋での勤務を開始し、黒川温泉 青年部に入部。その後、御客屋の七代目御客番として青年部長などを歴任。現在は史上最年少、女性初の黒川温泉観光旅館協同組合代表理事を務める。また、2013年に仲間と立ち上げた「NPO法人 南小国まちづくり研究会 みなりんく」では代表理事を務め、地域×企業等の新しい共創プロジェクトに取り組んでいる。

Historic Inn Okyakuya

Historic Inn Okyakuya

熊本県 > 黒川・杖立

江戸末期に創業した黒川温泉一の老舗旅館「歴史の宿 御客屋」。約300年に渡ってこんこんと湧き出る天然温泉かけ流しの湯や、懐かしさを感じる和室でお寛ぎいただけます。笑顔あふれるアットホームなおもてなしが詰まった宿です。