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過去・現在・未来の融合で生みだす新しい価値

塩川:御船山楽園では、アート集団であるチームラボとコラボレーションもしていますよね。小原さんの美的な感覚の根底には、幼少の頃からの自然体験が影響しているようですが、チームラボとの取組にもそういったことがあらわれているのでしょうか。

小原:そうですね。チームラボの作品を好きになったきっかけは、台湾で展示されていた3Dホログラムによるアート作品を見たことでした。「秩序はなくともピースは成り立つ」という作品で、古人やウサギ、カエルが踊っているところに鑑賞者が近づくと、それに気付き踊りをやめたり、リアクションをしたりするインタラクティブな作品でした。その作品を見て、鳥獣戯画のような世界観を御船山で表現したいと思いました。3Dホログラムで立体になる2次元の蒔絵の世界や鳥獣を日本庭園に表現することで、子供も大人も楽しめるアート空間になるのではないかと考えたのです。ただ、屋外でそれを表現するのは今の技術ではなかなか難しく、実現には至りませんでしたが、自然等の物理空間の中に何かしら新しいものが入っていく、投影されるものには引き続き興味がありました。

御宿 竹林亭

塩川:チームラボには最先端のテクノロジーがあります。そこで見えてくる可能性を感じていらっしゃるのでしょうか。

小原:私たちが得意とするところは、歴史や文化、伝統などの過去を継承し、今の時代に合わせて必要があれば変えていくことです。「過去」と「現在」に重きが置かれますが、さらに「未来」に対して何かしらアプローチすることができたら、それはまた今までにない新しいなにかを表現することが出来るのではないかという期待があるのです。

塩川:「庭屋一如」の磨き上げを進める中でチームラボとの出会いがあり、小原さんの描く新しい「庭屋一如」の世界をつくりあげていくためにコラボレーションをはじめたのですね。

小原:以前テレビ番組でチームラボの猪子さん(チームラボの代表取締役)に、竹林亭の魅力を「時代時代の本当に良いものが積み重なっている上に、手探りで現代の良いものを加え更新しているところが贅沢で刺激的」と語っていただいたことがあります。また、2016年の御船山でのチームラボのアート作品についてテレビ取材を受けた猪子さんが、「日本には素晴らしい自然や歴史をもつ場所、特異な文化を残す場所が多数ある。それらは、深く知れば非常に魅力的である一方、ある人にとっては少し分かりにくい側面も持つ。しかし、デジタルアートがその場所の特性を生かし、新たな価値を付加し拡張することで、その空間をより魅了するものにできるかもしれないし、できたらいいなと思っている」と語ってくれていました。いま御船山でチームラボと一緒にやろうとしていることは、まさにそういうことだと思います。

塩川:テクノロジーを駆使して多重的な空間を創り出してきたチームラボと、そこに旅館の可能性や小原さんの思いが合致して、新たな取り組みが生まれたのですね。

小原:チームラボは、先人の表現の積み上げの上に今があるという点を大切にしているので、相性はきっといいと思うのです。2016年の夏に2回目のチームラボと組んだ「竹あかり」のイベントを開催し、池全面をプロジェクションしたうえで庭全体を演出しました。竹灯篭があって、星があって月があって。それらを高台から見えるようにしたのです。その世界観は、星をも取り込んだアートですね。それを鑑賞したみなさまが、こちらが意図する構図でSNSにアップしてくださっているのを見ると、きちんとこちらの想いが伝わっているのだなと感じ、嬉しくなりました。このイベントはSNSでの投稿と拡散の効果もあり、日を増すごとに入園者数が増えて、2ヶ月の開催期間で延べ5万人のお客様にご来園いただきました。

塩川:そのプロジェクションマッピングで困難なことはありましたか?

小原::困難は常に起こります。自然のため地形や対象物が複雑で、屋内でやるのとはまるで様子が違います。プロジェクターの照度やフォーカスなどの調整で、試行錯誤の連続でした。月の明るさも湖面に影響するので、映りのよい日とそうではない日があります。自然が相手なので、すべてをこちらでコントロールすることは出来ませんね。

御宿 竹林亭 御宿 竹林亭

塩川:御船山楽園の魅力を存分に活かした取組だったと思いますが、そもそもこの御船山楽園が設計された由来と、今に繋がる思いがあれば伺いたいと思います。

小原:御船山楽園は、鍋島茂義公という武雄領主が創設したお庭です。鍋島茂義公は非常に頭がよく、才能豊かな方だったようで、20代で佐賀藩の家老に抜擢されています。また、科学者、植物学者、絵師でもあり、「皆春斎」という称号まで持っていました。そういう方がつくったお庭ですので、もし茂義公が現代に生きていれば、きっと同じようにいろいろな取り組みを行っていたと思います。そういう意味で我々は、「Dear鍋島」という、鍋島藩や茂義公に対するリスペクトを抱えながら未来に進んでいきたいと思っています。

塩川:その歴史、文化、伝統が残されているということを、小原さんはこの地で感じてきたわけですね。

御宿 竹林亭

小原: 庭もおそらく茂義公がこだわりを持ってつくったのだと思います。ですから私の解釈では、作庭において御船山は、「山」ではなく「景石」として捉えていたのではないかなと思うのです。いわゆる禅庭園的なところで言うと石が山で、苔が島で、玉砂利が海なのですよね。御船山を石に例えて、それに対する造形をしたとすると、すごいランドスケープではないですか。庭全体に勾配があり、庭園の下部からも上部からも御船山がシンボリックに見えるように計算され作られているのです。庭園下部では、古池と紅葉の背景としての御船山、登っていくと見渡す限りのツツジの背景として御船山があって、いろいろな視点で山を見せているのです。私の知る限り、こんなに立体的な庭の構造は他にないと思います。

塩川:自然との調和が偶然にも重なっているというような光景は、まさに総合芸術ですね。「“四季を旅する国に出会う”喜びを」というのが1つのコンセプトで、このお庭でそれをすべて体験できるというのが価値としては素晴らしいと思います。こういうスケール感は海外に行かなければ見つからなさそうですね。

小原:ありがとうございます。それはやはり自然が表現してくれるからだと思います。四季の移ろいの中で宿もまた自然と移ろいでいく。お部屋から見える景色は春夏秋冬365日、刻々と変化し続けています。そのため、竹林亭の客室のしつらえは出来るだけシンプルに、窓越しの自然を邪魔しないように気を配っています。また、窓越しに見る景色はすべて竹林亭の敷地なので、そういう意味でも自然景観が守られています。日本は国土が狭くいろいろと制約もあるので、海外の広大で自然あふれるリゾートのような場所は少ないかもしれないですね。竹林亭は御船山楽園内にあり、御船山楽園が鍋島藩の領地だったということで、その広大な敷地を現在まで遺してくれいることに大変感謝しています。

御宿 竹林亭 代表 小原 嘉久

御宿 竹林亭 代表

小原 嘉久

1975年佐賀県生まれ。大学卒業後、ホテルスクールを経て、旅行会社に入社。2003年(株)御船山観光ホテルに入社。2007年より代表に就任(御宿 竹林亭・御船山観光ホテル・御船山楽園)。現在に至る。

Onyado Chikurintei

Onyado Chikurintei

佐賀県 > 嬉野・武雄

15万坪もの敷地からなる御船山楽園の中に佇む、「御宿 竹林亭」。壮大な御船山と、四季折々の自然に溶けこむように作られた宿は、まさに「庭屋一如」の世界。日本の四季を愛でる喜びを感じる旅にでかけませんか。