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第4章 「日本人のDNA」がつくる、100年目の奥津荘

奥津荘

塩川:宿を運営していく上では人材がとても重要なポイントになると思いますが、人材に対する考え方をお聞きしたいと思います。

鈴木:先ほど申し上げましたように、自然体ですよね。わたしは取ってつけたように使われる“おもてなし”という言葉はあまり好きではなくて。そうした言葉に頼らずとも、日本人のDNAの中には生まれ持った“おもてなしの精神”があるはずなのです。それぞれが持っている自分の思いを相手に伝えることの方が、この奥津荘や、奥津という地域にマッチすると思いますし、こちらがこうしてくれ、ああしてくれと言って押し付けたマニュアルではなくて、本人の中から自然に出てくる思いを表現してもらいたいと思っています。

塩川:ご自身の個性でお客さまを迎えてくれれば、それで十分だという考えなのですね。

鈴木:これはスポーツ用品の社員時代から一貫していますけれども、職場というものはプライベートの自分とは違う役を演じる舞台だと思っています。職場という舞台で思い切り素の自分を出す役者もいれば、つくった役柄になる役者もいる。とにかく、「旅館のスタッフ」という役を演じ、どうしたら自分が楽しくなるかということは自分自身で考えてくれと伝えています。

塩川:お客さまへの接客は、内発的に出てくる動機によって自分の考えでしてくれたらいいということですね。

奥津荘 奥津荘

鈴木:そうですね。常連のお客さまは、奥津荘の三種の神器は、まず温泉。その次に料理。そして、一番の宝がスタッフだとおっしゃいます。全国の宿に行かれるお客さまから、「奥津荘は人がいいのだ。それが安心して来られる理由だ」とよく言われます。他の宿に泊まってみても、そこで働いている人たちが幸福感を感じていなければ落ち着かないですし、ギスギスしている雰囲気を感じれば無意識にマイナスになりますね。

塩川:奥津荘は「日本 味の宿」(その土地らしさを表現した味わい深い宿が集まったグループ、以下味の宿)に加盟されています。この活動の思いや背景をお聞かせください。

鈴木:「味の宿」には現在34軒の宿が加盟していますが、一定の基準を満たしている宿ですので、安心してお客さまをご紹介することができます。この34軒には、うちの温泉と同じように、「本質」というところをしっかりやられているところがありますね。お客さまとのマッチングが重要な我々の業界ですが、業界の地位を向上させることで、就職したいという人が増えてくれば労働力の底上げにもなりますし、「泊まりたい」につながってきます。

塩川:自分の宿だけへの思いというよりも、頑張っている宿同士が集まって業界全体を底上げしようということですね。最後に、奥津荘と鈴木さんの未来への展望を教えていただきたいと思います。

鈴木:奥津荘は2017年で90年、あと10年でちょうど創業100年を迎えます。100年経てば99年目とは違った見られ方もするでしょうし、自分たちも違う思いが出てくるでしょう。建築的、歴史的な価値も含めて、100年という価値はしっかりとかみしめたいと思います。それに向けて、例えば酸味の強い味にするのか、辛みが強い味にするのかというところがこれからの10年の仕事です。今まで90年続いてきた中で、変わったものもありますが、本質は創業者が描いたことと変わってはいないのかなと思っています。100年経っても150年経っても本質的な部分を変えずにいれば、いろいろなものとの調和、バランスが取れると思うのです。

塩川:継承していく喜びや重みが、そこにはありますね。本日はありがとうございました。

奥津荘

写真:杉原 恵美 / 文:宮原 とも子

有限会社奥津荘 代表取締役 鈴木 治彦

有限会社奥津荘 代表取締役

鈴木 治彦

1978年、岡山県出身。料理の専門学校を卒業後、旅館業以外の様々な職種を経験。地元・奥津温泉に戻り、2013年に「名泉鍵湯 奥津荘」の4代目社長に就任。

OkutsuSo

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岡山県 > 津山・美作三湯・蒜山

「鍵湯」と呼ばれる源泉かけ流しが自慢の極上の湯宿、名泉鍵湯 奥津荘。和風でありつつどこか現代的な、伝統あるこの宿で、歴史を肌で味わう旅はいかがですか。