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人々が集うアートコロニーの未来

塩川:地域を巻き込んだ取り組みとして、「山のシューレ」のようなイベントを開催されていますが、その思いをお聞かせください。

北山:「山のシューレ」は、二期倶楽部とNPO法人アート・ビオトープが主催する3日間の「大人の文化祭」です。以前から、「アートコロニー」という小さな村をつくりたいという漠然としたイメージを持っていました。それで、自然の中のスパリゾートとして二期倶楽部東館を、休日を楽しむ空間として「アート・ビオトープ那須」を設けました。本来、ビオトープとは工業化の進んだ1960年代のドイツではじまったエコロジー運動から派生した思想なのですが、ここではそれに「アート」をつけて、アートを必要とする方々や、同じように知的好奇心を持つ方々がここに集い、語らい、ともに過ごす場所をイメージしました。さらに、この横沢エリアのモニュメントとして「七石舞台かがみ」をつくり、小さな村としてのファクターがすべて揃ったのです。そして、そこにはお祭りがなくてはいけないと自然と思いつき、誕生したものが「山のシューレ」なのです。

二期倶楽部 二期倶楽部 二期倶楽部

塩川:村があればお祭りがなくてはならないと発想されたのですね。

北山:3.11の東日本大震災以降、みなさんはコミュニティを大切にしはじめていますよね。コミュニティを醸成するには神社、鎮守の森が必要だと聞いて「なるほど」と思いました。リゾート地にはよいレストランがあり、簡素だけれども清潔な寝具が用意されたホテルがあり、その延長にアートを楽しめる機能とみんなで楽しめる祝祭空間があるというのは、極めて自然な発想なのですね。都会からいろいろな方がここに集い、数日間寝食を一緒にするというのはとても尊い経験だと思います。消費者の旅のスタイルは、ゆるやかに文化や知に移行しているように見えます。私たちには、リゾートが本来持つ文化的拡がりに目を向け、実践していくことが大切なのではないでしょうか。

二期倶楽部

塩川:私もこれまで「山のシューレ」に2回参加させていただきましたが、地域や世代を超えたつながりですとか、豊かなご縁が増えていくということを実感しています。

北山:この場所に共感する人たちがこの自然の中で触れ合って、さりげなくさよならするという、淡き交流がすごく素敵ですよね。みなさんがその年のテーマを日常に持ち帰って深めていただければ、主催者としては大変うれしいことです。土地の人々や自然に迎えられて、その文化や芸術に触れることが観光の本質であるとも思っています。

塩川:このお話はすごく深いと思います。例えば、癒しだけではなくモチベーションを高めるために芸術に触れるという方法もありますよね。

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北山:モチベーションは周囲から与えられるのではなく、自分の内発的動機から湧き上がるものですよね。今日より良い明日を迎えたいという心持ちでしか、モチベーションは生まれないと思うのです。どうも現代人は、文化や芸術の刺激によって改めて五感を開放することに、活路を見出しているように思えます。また、目標の先に高い理想や大きな志を持つことが、美意識をつくる源泉なのではないかと思うのです。マラソンに例えるならば必ず到着するものが目標ですよね。一方、志というのはもっと高みにあるもの。それを持ちつづける人間は、成長の幅も大きいと、この歳になって思います。

塩川:二期倶楽部そのものが志を持って歩まれていると感じますが、今後の展望や未来はどのように描かれていますか?

北山:ここ横沢エリアをアートコロニーにすることが私自身の大きなライフワークです。本館、東館、石舞台、アート・ビオトープ那須をつくり、これからはその延長に定住いただけるプレミアムなレジデンスもつくりたいですね。いま最も注力しているのは、アート・ビオトープ那須の上段に森をつくり、本来の横沢の森の姿に戻すという活動です。完成すれば、このエリアと調和した新しい「庭」が出現します。それが目下の私の楽しみですね。

塩川:「山のシューレ」もまだまだ進化の途中ということですね。

北山:ホスピタリティビジネスから、新しい文化資本を創出していきたいと思っています。「山のシューレ」を資源に、文化リゾートとしてのあるべき姿をさらに考察し、深めていきたいものです。

塩川:コミュニティの中でお互いを思いやること、それが幸せなのだと気づく時代になっていくのかもしれませんね。

北山:時代はまさに成長期から成熟期に入っていますが、産業界の一部はまだ旧態依然として成長を求めていますよね。その結果、人間としての何かが壊れていくという矛盾を抱えているのが現代だと思うのです。だからこそリゾートホテルというものが、ひとりひとりが強欲と過剰にブレーキをかけ、人間にとっての価値の本質を見つめていくことのきっかけになればと思っています。ホテル業としては活動範囲外のことかもしれませんが、私は私らしいホテルを創っていきたいと考えているのです。

塩川:北山さん、そして二期倶楽部の経営哲学をとても深い部分までお話しくださり、大変勉強になりました。本日は、ありがとうございました。

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写真:田中 和広 / 文:宮本 とも子

株式会社二期リゾート 代表取締役/二期倶楽部 総支配人 北山ひとみ

株式会社二期リゾート 代表取締役/二期倶楽部 総支配人

北山ひとみ

東京都出身。1980年、株式会社栄光の創立に携わり、経営企画室取締役・第二事業本部長を経て1986年に「二期倶楽部」を開業。その他、長期滞在型レジデンス「アート・ビオトープ那須」、東京・千鳥ヶ淵のライブラリーカフェ「ギャラリー册」の運営のほか、2014年より「千本松・沼津倶楽部」のホテル運営受託事業を手掛ける。