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スペックではなくストーリーを売るということ

鬼怒川金谷ホテル

塩川:鬼怒川金谷ホテルのようなしつらえを拝見すると、旅館という枠組みを超えて企業体として世に出ていくのだとも感じられます。

金谷:私が経験したものをホテルに反映する、あるいはスペックを売るというよりも、「ストーリー」を売ろうと考えているのです。4年前に鬼怒川金谷ホテルをリブランドした際に、私たちはブランド・ステートメントを作成しました。情報共有は大切ですが、数字は共有できてもビジョンを共有するというのは難しいことです。そこで、社員全員でイメージを共有してお客様のペルソナを設定し、そこから連想される3つのキーワード、「伝統」と「和洋」と「コンテンポラリー」を拾い上げ、自分たちの進むべき方向性を「進歩的かつ伝統的」、「格式より粋」、「フォーマルから少しカジュアルへ」、「男性目線の美学」のように細かく分析し全社員が共有しています。

塩川:そこからどのようなブランドアイデンティティを導き出されたのですか?

金谷:鬼怒川金谷ホテルは、日本最古のホテルをルーツに「東洋と西洋」、「伝統とモダン」のサービスが心地よく融合する「和のラグジュアリーリゾート」であるというところにたどり着きました。これに当てはまるサービス、料理、しつらえを目指すということでもあります。また、祖父であるジョン金谷鮮治をブランドパーソナリティとして、それをお客様に伝えるために「East meets West」、東洋と西洋と交わるところが旅館とホテルであるという概念に、「リゾートエレガンス」という言葉を落とし込んでいます。そのブランドアイデンティティを実施するために各部署で禁止事項、推奨事項を決めているのです。

塩川:そうしてできたブランド・ステートメントが全体の行動規範になっているのですね。

金谷:私の感性のみで運営しているように見えるかもしれませんが、実はこうしたブランド・ステートメントをつくり上げているのです。そうすることで、私の軸がぶれそうになれば「ブランド・ステートメントと違う」ということで再考させられます。コンセプトを維持するために、毎年少しずつブラッシュアップしていますね。枠組みがなくてなんでもアリになってしまうのはよくありません。方向性がぶれないようにする必要があります。

二期倶楽部 二期倶楽部 二期倶楽部

塩川:お客様にとって満足いただけるように、全社員のみなさまでひとつの方向に向かっていける環境づくりを推進していることがわかります。

金谷:儲けがあればなんでもいい、ではなくビジネスの方向性は明確でないといけません。鬼怒川金谷ホテルは女将制のない旅館ですので、ブランド・ステートメントがないとぶれてしまうのです。リニューアル前は、鬼怒川金谷ホテルといえば「料理である」、「サービスである」という人もいれば、「お馴染みさんに支えられていることが何より重要」と、社員それぞれが思い思いのイメージを持っていました。それは悪いことではないのですが、それだけでは同じ方向性でビジネスを走らせるというのは難しくなってしまいます。

塩川:今の金谷さんの自己評価はいかがですか?

金谷:自分としてはまだまだですね。2012年にブランド・ステートメントを立てたときに、稼働率、売上、単価それぞれの目標を定め、それは3年間で達成できました。再生を終了したあとに鬼怒川温泉ホテル・鬼怒川金谷ホテルとも良い方向に向かってはいるのですが、それは一区切りでしかありません。現在は第2章として、新しいホテルブランドを構築し、開業させるという取り組みをはじめています。ゼロからスタートする力はまだまだだと思っていますし、そのためにはもっとブランド力を高めていかなければいけませんので、「これから」ですね。

金谷ホテル観光株式会社 代表取締役社長 金谷譲児

金谷ホテル観光株式会社 代表取締役社長

金谷譲児

1973年生まれ。大学時代をスイス・アメリカで過ごし、THE KITANO HOTEL NEW YORKにてホテル・マネジメントを学ぶ。2001年に帰国し金谷ホテル観光株式会社に入社。2008年に鬼怒川金谷ホテルの総支配人に就任後、2011年3月より現職。

Kinugawa Kanaya Hotel

Kinugawa Kanaya Hotel

栃木県 > 鬼怒川・川治・湯西川・川俣

日光の豊かな緑に囲まれてたたずむ、鬼怒川金谷ホテル。東洋と西洋、伝統とモダンが融合する、“渓谷の別荘”です。