登録有形文化財の宿10選|歴史を感じる贅沢な滞在

今回はRelux編集部が厳選した登録有形文化財の宿をご紹介します。江戸・明治・大正・昭和と時代を超えて受け継がれてきた建築美や、文豪たちに愛された趣ある空間で、日本の歴史と文化に触れるーー。
現代では味わえない特別な時間が流れる、文化財の宿での贅沢な滞在を探しに行きませんか。

目次

高志の宿 高島屋(新潟)

宝暦5年築、270年の歴史を刻む国登録有形文化財の庄屋屋敷

高志の宿 高島屋

「高志の宿 高島屋」は、宝暦5年(1755年)に建てられた江戸時代の庄屋屋敷を本館に生かした木造りの和の宿で、平成16年に国登録有形文化財に登録されています。建物は雄大な構えを見せ、竹林や老松、四季折々の花が彩る庭園も見事であり、夜にはライトアップされて厳かな雰囲気を感じることができます。明治11年には明治天皇が御小休された由緒ある建物で、270年もの時を刻み続ける囲炉裏を構えたロビーは非日常の空間となっています。

将棋・棋聖戦の舞台としても知られる泊まれる料亭

高志の宿 高島屋

国登録有形文化財の泊まれる料亭として、ひと品ひと品手間を惜しまず作る伝統日本料理を提供しています。将棋の8大タイトル戦・棋聖戦の開催宿として知られ、板長が当日の仕入れに合わせて献立を決定する会席料理では、その季節の旬の食材を堪能できます。岩室温泉の黒湯として知られる硫黄・塩化物を含む希少な泉質の温泉を古代檜の大浴場や石造りの露天風呂で楽しめ、地元産の食材を使用した料理長の繊細な技が光る日本料理とともに、歴史を感じる特別な滞在ができます。

施設名高志の宿 高島屋
住所新潟県新潟市西蒲区岩室温泉678甲
施設の特色・宝暦5年(1755年)築の江戸時代の庄屋屋敷を本館とした国登録有形文化財で、明治天皇も訪れた270年の歴史と木造りの美を今に伝える建築
・約180年前の古民家を移築した温泉内風呂付きの離れや、庭園を望む露天風呂付き客室、将棋や囲碁の対局室として使われる竹林に面した客室を完備
・板長が当日仕入れに合わせて献立を決定する伝統日本料理と、硫黄・塩化物を含む希少な黒湯の源泉かけ流し温泉

積善館(佳松亭・山荘)(群馬)

昭和の名工が織りなす、桃山様式の文化財建築

積善館(佳松亭・山荘)

群馬県四万温泉に佇む「積善館」は、元禄7年創業から300年以上の歴史を誇る名旅館です。その中でも「山荘」は昭和11年に建てられた国の登録有形文化財で、桃山様式を用いた優れた建築技法が評価され、群馬県近代化遺産にも登録されています。各客室には繊細な匠の技が随所に光る組子障子が設えられ、その意匠は部屋ごとに異なる美しさを見せます。昭和の偉人たちが愛した避暑地として、静謐な空気に包まれた特別な時間が流れる空間です。

高台の静寂に抱かれる、心づくしの旅館体験

積善館(佳松亭・山荘)

山荘よりさらに奥の高台には「佳松亭」が賑わいを離れて佇んでいます。荘厳な日本画を思わせる老松の枝ぶりや高く広がる空と流れ行く雲の表情を眺めながら、深い松林と竹林に囲まれた静かで特別な時間を過ごすことができます。300年以上の歴史を持つ湯治場としての温もりや落ち着きはそのままに、快適に過ごしていただける空間と温泉旅館ならではの贅と心づくしを堪能するのがおすすめです。総料理長自慢の懐石料理は、山荘では四季替わり、佳松亭では月替わりで、素材の美味しさを大切にした食前酒からデザートに至るまで思う存分愉しめます。

施設名積善館(佳松亭・山荘)
住所群馬県吾妻郡中之条町大字四万甲4236
施設の特色・昭和11年建造の山荘は桃山様式の国登録有形文化財、各部屋異なる組子障子の意匠が美しい
・四万温泉最奥の高台に位置する佳松亭で老松の枝ぶりを眺める静寂の滞在
・山荘では四季替わり、佳松亭では月替わりの総料理長自慢の懐石料理を堪能

富士屋ホテル(神奈川)

歴史を刻む登録有形文化財の和洋建築群

富士屋ホテル

「富士屋ホテル」は、1878年に日本初の本格的リゾートホテルとして箱根・宮ノ下に誕生した歴史あるホテルです。1997年には「本館」、「西洋館」、「花御殿」などの建物の多くが国の登録有形文化財に指定されました。「本館」は社寺建築を思わせる瓦葺屋根と唐破風の玄関が特徴で、和と洋が融合した独特の意匠を持っています。

令和に蘇った新生クラシックホテル

富士屋ホテル

2年以上に及ぶ大改修を経て、2020年に新生「富士屋ホテル」が誕生しました。いにしえの趣や意匠、おもてなしの心はそのままに、より心地よいくつろぎの時間を提供するクラシックホテルとして生まれ変わっています。全120室のすべての客室に名湯・宮ノ下温泉を引いており、部屋でも温泉を楽しめる贅沢な空間となっています。

施設名富士屋ホテル
住所神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下359
施設の特色・本館、西洋館、花御殿など明治から昭和初期の建築群が国の登録有形文化財に指定され、和洋折衷の歴史的建築美を堪能できる
・全120室すべての客室バスルームに箱根七湯の一つ、宮ノ下天然温泉を完備し、プライベートな湯浴みを満喫可能
・国の登録有形文化財「メインダイニングルーム・ザ・フジヤ」でのフランス料理、旧宮ノ下御用邸「菊華荘」での日本料理など、歴史ある空間で格式高い食事を楽しめる

沼津倶楽部(静岡)

登録有形文化財で過ごす非日常の滞在

沼津倶楽部

大正2年(1913年)にミツワ石鹸の二代目社長・三輪善兵衛が別荘として建てた数寄屋造りの建物「松岩亭」を起源とする「沼津倶楽部」。2015年には「茶亭」と「長屋門」が国の登録有形文化財に指定されました。茅葺屋根の長屋門は、柱をなぐり仕上げとし、腰に割竹や杉皮、なぐり仕上げの竪板を張るなど、数寄屋意匠を用いた草庵風の佇まいが特徴です。

名建築家が手がけた集合別邸とモダンチャイニーズ

沼津倶楽部

約3,000坪の敷地内には、建築家・渡辺明氏が設計した宿泊棟が2008年に増築され、氏の遺作として知られています。富士川の砂と土を積み重ねた版築壁が特徴的で、地層のようなデザインが周囲の自然と調和し、雨の痕やクラックまでもがアクセントとなり日々表情を変えます。全8室の客室からは富士の湧水を使用した水盤と庭園を望むことができ、プライベートな檜風呂も完備されているのも嬉しいポイント。食事は登録有形文化財の茶亭で、静岡県出身のシェフ・齋藤宏文氏監修によるモダンチャイニーズを堪能できます。

施設名沼津倶楽部
住所静岡県沼津市千本郷林1907-8
施設の特色・国の登録有形文化財に指定された茶亭と長屋門を有し、110年の歴史を持つ数寄屋造りの建築美を体験
・建築家・渡辺明氏の遺作である版築壁が特徴的な集合別邸で、わずか8室の特別な空間を満喫
・静岡県出身のシェフ監修による駿河湾の新鮮な魚介と地元食材を使ったモダンチャイニーズを文化財建築で堪能

文化財の宿 新井旅館(静岡)

歴史画家が設計した国内随一の文化財風呂

文化財の宿 新井旅館

「文化財の宿 新井旅館」は明治5年創業の老舗旅館で、1998年には客室棟や浴場など15件の建物が国の登録有形文化財に登録されました。中でも注目すべきは、歴史画の大家・安田靫彦の設計による総檜造りの「天平大浴堂」で、天平時代の建築を再現するため昭和6年から3年の歳月をかけて完成させた文化財風呂です。三代目館主・相原沐芳が安田靫彦や横山大観といった文人墨客と深い親交を持ち、芸術家たちの感性が建物や庭園にも反映され、数多くの日本画や文学作品が生まれる舞台となりました。

芸術家に愛された伝統と静寂の空間

文化財の宿 新井旅館

清流桂川沿いに建つ木造建築は、芥川龍之介や初代中村吉右衛門といった文化人が逗留した客室が今も残されており、歴史と文化を体感できます。全ての浴場が天然温泉の掛け流しで、アルカリ性単純泉の泉質は肌に優しく「美人の湯」と評判です。

施設名文化財の宿 新井旅館
住所静岡県伊豆市修善寺970
施設の特色・客室棟や浴場など15件が国の登録有形文化財に指定された歴史的価値の高い建築群
・天平時代を再現した総檜造りの「天平大浴堂」をはじめ、野天風呂や貸切風呂など多彩な温泉施設
・文人墨客に愛された伝統を受け継ぐ会席料理を客室でゆっくり堪能できるおもてなし

おちあいろう(静岡)

文豪が愛した登録有形文化財の温泉宿

おちあいろう

明治7年創業の「おちあいろう」は、国の登録有形文化財として玄関を含む7棟が指定されている伊豆の温泉宿です。旧幕臣の山岡鉄舟により、2本の川が合流する狩野川の畔に佇むことから名づけられました。島崎藤村、川端康成、北原白秋など名だたる文人墨客が愛し、この場所で執筆活動に没頭した歴史があります。客室、階段、廊下など随所に職人の技が光る意匠を凝らした装飾や精密な細工を楽しめます。

昭和初期のモダニズムが薫る贅沢空間

おちあいろう

2019年のリニューアルでは歴史的建築美はそのままに、水回りなどの設備を一新し快適性を高めました。オールインクルーシブで滞在中の飲食を気兼ねなく楽しめるほか、2025年版ミシュランガイドで2年連続1ミシュランキーを獲得した質の高いおもてなしを体験できます。

施設名おちあいろう
住所静岡県伊豆市湯ケ島1887-1
施設の特色・玄関を含む7棟が国の登録有形文化財として指定された歴史的建築物
・黒柿や紫檀など稀少な銘木奇木を用いた匠の技が光る意匠と精密な細工
・文豪に愛された伊豆の温泉と天城湯ヶ島温泉の源泉かけ流しを全室完備

伊良湖温泉 和味の宿 角上楼(愛知)

昭和初期の趣を今に伝える、国の登録有形文化財

伊良湖温泉 和味の宿 角上楼

「伊良湖温泉 和味の宿 角上楼」は、昭和元年創業の純日本旅館です。本館は1936年に竣工した築100年近い歴史ある建物で、2022年に国の登録有形文化財に登録されました。中庭を取り囲むようなコの字型の建物は、2階に大きなラス戸を配した近代和風建築の特徴を備えています。玄関をくぐった時からタイムスリップしたような昭和レトロな空間が広がり、忘れていた時間、あの頃の気持ちが蘇ります。

渥美半島の海の幸と美肌の湯で心身を癒す

伊良湖温泉 和味の宿 角上楼

渥美半島の先端に位置する約3000㎡の広大な敷地には、木の香る本館「角上楼」をはじめ、メゾネットタイプの「翠上楼」、露天風呂を配した「雲上楼」の3楼があります。伊良湖の魚市場より毎日仕入れる旬の地魚を使った創作会席料理が自慢で、特に日本一の水揚げを誇る天然とらふぐは冬の名物料理となっています。弱アルカリ性の伊良湖温泉は肌の角質を取る「美肌の湯」として知られ、上質な湯に包まれて心身ともに癒されるひとときを過ごせます。

施設名伊良湖温泉 和味の宿 角上楼
住所愛知県田原市福江町下地38
施設の特色・昭和初期に建築された本館は国の登録有形文化財で、コの字型の近代和風建築の佇まいが魅力
・日本一の水揚げを誇る天然とらふぐをはじめ、主人自ら仕入れる渥美半島の新鮮な地魚の創作会席料理
・肌に優しい弱アルカリ性の美肌の湯「伊良湖温泉」で贅沢な癒しの時間を堪能

NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町(三重)

築約150年の登録有形文化財を活用した、城下町に点在する分散型ホテル

NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町

「NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町」は、江戸後期に生薬問屋として建てられ、明治初期から昭和にかけて料理旅館として地域の人々に親しまれた「栄楽館」という国登録有形文化財を含む5軒の歴史的建造物を活用した分散型ホテルです。「栄楽館」は1873年(明治初期)に竣工した木造2階建の建物。数寄屋風の意匠が特徴的で、欄間や高欄に竹と扇を主題とした細工を施すなど、部屋ごとに天井の意匠を変えた変化に富む内装が見応えのある建築です。

伊賀の歴史と文化を体感する、まち全体をホテルにした滞在

NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町

フロント棟でのチェックイン後、歴史的情緒あふれるまち並みを楽しみながら各客室へと向かい、江戸時代から続いた生薬問屋などの歴史的建造物で、かつての趣とモダンなインテリアが調和した滞在を楽しめます。幻の伊賀牛、全国米の食味ランキング最高位特Aの伊賀米、伊勢志摩サミットの乾杯酒にもなった世界レベルの伊賀酒など、地元生産者が丹精込めて育てた食材の持つ力を五感で愉しむ美食体験も提供されています。「伊賀流忍者博物館」や「手仕事伊賀くみひもづくり体験」など、美食・歴史・文化との出会いを通じて、身体と心の疲れを癒すひとときを過ごせます。

施設名NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町
住所三重県伊賀市上野相生町2842
施設の特色・1873年竣工の国登録有形文化財「栄楽館」を含む5棟の歴史的建造物を活用し、数寄屋風の意匠や竹と扇を主題とした欄間など当初の建築美を保存
・城下町に点在する客室を巡りながら暮らすように泊まる分散型ホテルで、まち全体を回遊する特別な滞在体験
・幻の伊賀牛や特Aランクの伊賀米、世界レベルの伊賀酒など地産地消の食材をフレンチ技術で仕上げた美食体験

登録有形文化財の宿 名泉鍵湯 奥津荘(岡山)

昭和2年築の木造建築が紡ぐ温泉文化の歴史

登録有形文化財の宿 名泉鍵湯 奥津荘

「登録有形文化財の宿 名泉鍵湯 奥津荘」は、岡山県奥津温泉に佇む創業90余年の温泉旅館です。昭和2年(1927年)に建てられた本館は、当時の伝統的な木造建築技術を今に伝える貴重な建造物として、2018年に正式に国登録有形文化財に指定されました。唐破風を持つ風格ある玄関や格子窓から差し込む柔らかな光、温かみのある木のぬくもりが館内を包み込み、昭和の風情と現代の快適性が見事に調和した空間となっています。

希少な温泉「鍵湯」を独占

登録有形文化財の宿 名泉鍵湯 奥津荘

かつて美作津山藩主が鍵をかけて独占したと伝わる「鍵湯」は、吉井川の川底から42.6度の源泉が自然に湧き出る希少な温泉で、加温・加水一切なしの新鮮な湯を24時間堪能できます。全8室の客室はそれぞれ趣が異なり、岡山県産の旬の食材を調理した丁寧な手作り会席料理が絶品です。

施設名登録有形文化財の宿 名泉鍵湯 奥津荘
住所岡山県苫田郡鏡野町奥津48
施設の特色・昭和2年築の伝統的木造建築が国登録有形文化財に指定された歴史ある宿
・自慢の温泉「鍵湯」で空気に触れていない新鮮な源泉を独占
・岡山県産食材の手作り会席料理と作州牛の郷土料理

国文化財の宿 美保関温泉 旅館美保館(島根)

明治の建築美を今に伝える、国登録有形文化財の老舗割烹旅館

国文化財の宿 美保関温泉 旅館美保館

「国文化財の宿 美保関温泉 旅館美保館」は、1908年に竣工し、2004年に国の登録有形文化財に登録された「本館」を持つ老舗割烹旅館です。「本館」は木造2階建ての和風建築で、繊細な数寄屋風の意匠が特徴で、窓や欄間、手摺など各部に趣向が凝らされています。現在も建具や電灯など当時のものを使用しており、大山と美保湾を目の前に古き良き時代の息吹をそのまま感じることができます。

文化財建築で味わう特別な朝食時間

国文化財の宿 美保関温泉 旅館美保館

本館には中庭だった空間を昭和初期にガラス天井を配してアトリウムに改築した非日常的な空間があり、独特の雰囲気を醸し出しています。朝食は国の有形文化財に登録されている本館の広間で提供され、大正ロマン溢れる古建築と美保湾・大山の好眺望(美保大観)と共に楽しむことができます。

施設名国文化財の宿 美保関温泉 旅館美保館
住所島根県松江市美保関町美保関570
施設の特色・1908年竣工の本館は2004年に国登録有形文化財に指定され、数寄屋風の繊細な意匠と当時の建具や電灯をそのまま保存
・新館7階の展望大浴場と屋上貸切露天風呂から美保湾と大山を一望できる24時間利用可能な美保関温泉
・館主自ら境港のセリに赴いて仕入れる新鮮な海の幸を使った会席料理で、秋冬には紅ズワイガニや松葉ガニの料理も堪能可能

登録有形文化財の宿で、時を超えた贅沢な滞在を

時を超えて受け継がれてきた建築美と、歴史が紡いできた物語が息づく登録有形文化財の宿。
職人の技が光る意匠や、文化人たちが愛した趣ある空間で、日常を離れた特別なひとときを過ごしてみませんか。

SNSでシェアしよう!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次