Relux Journal

都心にありながら自然溢れる「ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅」。「禅」のブランドをつくってきた元支配人と、新しい「禅」を目指す新支配人に語っていただきました。

ゲスト

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅  2代目支配人 佐藤 智子

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

2代目支配人 佐藤 智子

2001年4月、株式会社 ニュー・オータニ入社。同年8月よりフロントオフィス課に勤務。2007年「エグゼクティブハウス 禅」の立ち上げに参画した後、宿泊営業部 法人マーケット担当を経て、2013年「エグゼクティブハウス 禅」2代目支配人に就任。2017年5月よりマネージメントサービス課にて、ホテルのブランディングを担当。

ゲスト

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅  3代目支配人 高畑 真紀

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

3代目支配人 高畑 真紀

オーストラリアで4年間に亘り、旅行会社の現地係員を務めたのち、日本に帰国。株式会社 ニュー・オータニ入社後は10年間コンシェルジュ経験を積み、2017年に「エグゼクティブハウス 禅」3代目支配人に就任。

インタビュアー

株式会社 Loco Partners 代表取締役副社長 塩川 一樹

株式会社 Loco Partners 代表取締役副社長

塩川 一樹

1979年生まれ、立命館大学経済学部卒。株式会社ジェイティービーを経て、株式会社リクルートへ中途入社。旅行事業部にて、首都圏・伊豆・信州エリア責任者を歴任し約2,000施設以上の担当を歴任。2012年7月より株式会社Loco Partners取締役に就任。

新しい試みだった、ホテル・イン・ホテル「エグゼクティブハウス 禅」

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

塩川:佐藤さんが、どのようないきさつで「エグゼクティブハウス 禅」に携わることになったのか、その歩みをお聞かせいただきたいと思います。

佐藤:2007年10月に「エグゼクティブハウス 禅」が開業し、オープニングスタッフの一人としてフロントから異動しました。当時はこの新しいプロジェクトのために、レストラン、ハウスキーパー、フロント、コンシェルジュなど、さまざまな部門からスタッフが集められてチームがつくられました。「エグゼクティブハウス
禅」は、ホテルニューオータニという1479室の大きなホテルの中に、87室の別のホテルをつくる「ホテル・イン・ホテル」というコンセプトのもとはじまりました。

塩川:佐藤さんは、もともとホテル業界を志望されていたのでしょうか。

佐藤:就職活動の際に心に決めていたことがいくつかありました。1つは自分のライフスタイルが変わっても一生続けられる仕事であること。もう1つは、かたちのないもの、目に見えないものを販売する仕事をしたいということです。すぐに数値化できないような、かたちのないものの方が、私の性格的に情熱をもって追究できるのではないかなと、漠然と思っていました。

塩川:そこからどのような流れで旅行業、ホテル業に目を向けられたのですか?

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

佐藤:私が就職活動をはじめた2000年は、ちょうど会社へエントリーする際にインターネットが使われ始めた頃でした。そうした便利なテクノロジーが発達すればするほど、おそらく人が動いて交流するということがより尊重されるのではないか、人と人が対面することは絶対になくならない、むしろより重要になるのではないかと考えて、この業界に魅力を感じたのです。

塩川:ホテルニューオータニに入社されて、どんなカルチャーの会社だという印象を持たれましたか。

佐藤:就職活動でこのホテルに来たときに、スタッフが私のことを、就職活動生ではなく、一人のゲストとして接してくれているということを感じました。面接も自分をつくり込まず自然体で臨み、そのままうまく進んだので、自分の居場所はこのホテルにあるのかなということを直感的に感じました。

塩川:「エグゼクティブハウス 禅」にはトータルで5年間に渡り携わったそうですが、どのようなブランディングを意識されてきたのでしょうか。

佐藤:そもそも、ホテルニューオータニが「エグゼクティブハウス
禅」を2007年につくった背景には、ホテル業界における「2007年問題」がありました。2007年前後の東京には、海外のホテルチェーンの最高級ブランドが数多く開業しました。世界に名だたるブランドが進出する中で、ホテルニューオータニは1964年の東京オリンピックの年に開業し、国内ではそれなりに認識いただいていていても、グローバル視点で見たときに、どれだけそういったブランドと戦えるのかという課題がありました。国産のホテルとして、そうした外的環境の変化をどう迎え撃つかをホテルニューオータニなりに考えた結果が「エグゼクティブハウス
禅」でした。

塩川:館内の和のしつらえや雰囲気など、意識してつくられてきているところへの思いをお聞かせください。

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

佐藤:日本のホテルが表現する和は、本当の和でなければいけません。日本のお客さまから見てもすんなりと入ってくるような和のテイストであるべきですし、海外の方が日本らしさを求めて東京にいらしたときに、本当の和を感じていただくことが大切だと思っています。以前、世界中を飛び回っていらっしゃる海外のお客さまから、「エグゼクティブハウス
禅」に泊まって朝起きた瞬間に、「自分は日本にいると感じることができた」と言っていただいたことがありました。それがまさに、私どもがお客さまへお伝えしたいことなのだと嬉しくなりました。

塩川:海外の方はもちろん、日本人から見ても違和感のない和を追究しておられるのですね。

佐藤:「エグゼクティブハウス 禅」ではオープン当初からリピーター率が5〜6割で、もともとホテルニューオータニをお使いいただいていた顧客にも「エグゼクティブハウス 禅」を受け入れていただけていると思っています。ホテルニューオータニが53年間の歴史を通じて考え抜いた日本らしいラグジュアリーが、「エグゼクティブハウス 禅」なのです。

塩川:1964年にホテルニューオータニをつくられた、先人達のフィロソフィが感じられます。

佐藤:ありがとうございます。「ホテル・イン・ホテル」というコンセプトも、10年前の開業当時はチャレンジだったと思います。ホテルニューオータニ全体の1479室の中に、87室の別のホテルをつくることで、「エグゼクティブハウス
禅」に滞在のお客さまには、36ヶ所あるレストランをはじめとする“一つの街のようなホテル”のスケールメリットと専用ラウンジというプライベートな空間でのチェックイン、チェックアウトなど小さなホテルのメリットと、双方を享受いただけます。それを表現したのが「ホテル・イン・ホテル」というコンセプトでした。また、「エグゼクテクィブハウス
禅」という名前も、ホテルニューオータニが考える安らぎや本当の豊さを、ひと言で表現するのに適したネーミングだったのではないかと思います。

「エグゼクティブハウス 禅」の支配人に受け継がれる思い

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

塩川:佐藤さんから支配人を受け継ぐにあたって、高畑さんはどのような思いでしょうか。

高畑:最初に私が支配人を引き継ぐという話を聞いたときは涙が出そうなほど不安で、何が起こっているのか分からず戸惑うしかありませんでした。入社してからずっとコンシェルジュひと筋だったので、「エグゼクティブハウス
禅」がどういうものか頭では理解していても、実際にお客さまがどう過ごされていて、自分はどういう接遇をすれば良いのかがまったくイメージができず、とにかく本当に不安でした。そんなとき佐藤から、「エグゼクティブハウス
禅がこれから海外のお客さまをより多く受け入れていくために、コンシェルジュの力が更に必要とされていて、そのためにあなたが適任だったのだ」と言われ、気持ちを切り替えることができました。また、つい先日、これも佐藤から、「莫妄想(まくもうそう)」という禅の言葉を教えてもらいました。

塩川:「莫妄想」とは、どんな意味なのですか?

高畑:「妄想することなかれ」つまり、過去にとらわれず未来に不安ばかりを抱いていないで、今、自分にできることを一生懸命やれば自ずと道は開けるという意味です。それを聞いたときは、目からウロコが落ちる思いで、とにかく頑張ろうという気持ちになりました。その話を聞いたあとに禅の教えを更に調べてみると、「歩歩是道場」という言葉を見つけました。「自分の志次第ですべての場所が自分を高める場所になる」という意味であると知り、まさに今の自分にふさわしい言葉だと感じたのです。

塩川:自分の心のあり方を教えられますね。高畑さんはこれまでのコンシェルジュというお仕事に代わり、「エグゼクティブハウス 禅」の支配人としてのフェーズでいよいよスタートされたわけですが、これまでのホテル以外のキャリアを通じて何を学び、何を活かしていかれるのか、お話をお聞かせいただけたらと思います。

高畑:私はもともと旅行の専門学校に通っていました。就職先は旅行とは関係のない会社だったのですが、やはり旅行に携わることをしたいと思うようになり、その後、単身オーストラリアに渡りました。そこで現地の旅行会社でツアーガイドとして働き、4年間を過ごしました。

塩川:その後、日本に帰国されてホテルニューオータニに入社されたのですね。

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

高畑:引き続きオーストラリアで働きたいとも思いましたが、色々と考え、日本に戻ることを選びました。帰国後に自分が日本で何をしようかと考えた結果、今まではオーストラリアで日本から来るお客さまを相手に仕事をしていたのですが、今度は海外から日本に来る方のお世話をしたいと思い仕事を探すことにしたのです。そんな折、ホテルニューオータニが「エグセクティブハウス
禅」や「ザ・メイン」(※)の改装を機に求人をしていましたので、それに応募しました。

塩川:コンシェルジュから支配人になられて、高畑さん自身の自分らしさをどうぶつけていくかといった心意気などがありましたらお聞かせください。

高畑:「エグゼクティブハウス 禅」の支配人になった直後に、スタッフがお客さまからもらったサンクスレターを読んだのですが、そこには「私は人と接する仕事をしているのですが、あなたの心のこもった接客を見て、自分の仕事の仕方を考えていきたいと思いました。」と書かれていました。「エグゼクティブハウス
禅」のお客さまは半分以上がリピーターですので、お客さまとより深い関係を築く機会は少なからずあるのですが、このサンクスレターをくださったお客さまのように、「エグゼクティブハウス 禅」ではお客さまの人生に貢献できる仕事ができるのだと胸を打たれました。これからは私もそういったことができるように、さらに海外からいらっしゃる方にも、また「エグゼクティブハウス 禅」に泊まりたいと思っていただけるような居心地の良い空間をつくっていきたいと思っています。

塩川:支配人から離れられる佐藤さんの思いも、お聞かせください。

佐藤:これまで「エグゼクティブハウス
禅」はブランディングを大切にしてきましたが、それはホテルがお客さまに押し付けるものではありません。まずはお越しいただくお客さま、滞在いただくお客さまが、ホテルに足を踏み入れたときよりも、お帰りになる方がほんの少しでも幸せな気持ちになっていただくことが、私どもの一番の役目だと思っています。ホテルを使われるお客さまは、その時々によってご用向きが違います。同じ方でも気分が違えば目的も違ったりすると思いますが、突き詰めれば、究極的には目の前のお客さまにいかに喜んでいただいて、幸せになっていただくかということに尽きます。今この瞬間をいかに大切にするかという一期一会の考え方は、すべての接客に携わる人にとっても大切な言葉であると思いますし、その積み重ねをすることで顧客が増え、お客さまの生き方に少しでも関わることができれば光栄なことだと思います。

※1964年開業の「ザ・メイン」は、「ザ・メイン」「ガーデンタワー」「エグゼクティブハウス 禅」と3つに分かれるホテルニューオータニ(東京)の宿泊エリアの1つ。回転展望ラウンジは当時、東京タワー等と並ぶ東京の名所で、2007年にリニューアルオープンを果たした。

退職後もホテルに携わりたい――。スタッフが持つ愛情

塩川:おふたりのお話をうかがっていますと、ホテルニューオータニそのものに対する愛情が感じられるのですが、いかがでしょうか。

高畑:私は入社したときから上司や同僚、先輩など周りのスタッフにとても恵まれていました。なぜホテルニューオータニが好きかといえば、働くスタッフが好きだからです。特にコンシェルジュで働き始めて間もない頃の上司からは、「サービスには上限はない」ということを教えられました。

塩川:その方の印象深いエピソードはありますか?

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

高畑:海外からご家族連れのお客さまがいらっしゃったのですが、お子さまがとにかく鉄道が好きで、東京の地下鉄マップを見て路線図が入ったTシャツが欲しいとおっしゃったのです。そこで地下鉄博物館に問い合わせたりインターネットで探したりしたのですが、結局見つかりませんでした。ところが、その上司は家に帰ってから、アイロンプリントで地下鉄マップのTシャツをつくって、翌日その家族にお渡ししたのです。そのTシャツを受け取って喜ぶご家族を見たときに、ホテルはこのようにお客さまに感動していただく仕事ができるのだということに、私自身も感動してしまいました。今まで自分もいろいろと転職をしてきましたけれども、こんなに職場環境のいいところは初めてでしたので、ホテルに対しての愛情に加えて、働くスタッフに対しての愛情が強くあります。

塩川:ホテルニューオータニでは日本庭園をゆったり歩いているお客さまが多くいらっしゃいますが、この大きな敷地と日本庭園についての思いをお聞きしたいと思います。

佐藤:日本庭園の存在にはとても助けられています。ホテルの歴史は50数年ですけれども、日本庭園にはさらに400年ほどの歴史があり、ずっとこの地を見守っているような存在です。毎年この時期には庭のいろいろなところに紫陽花が咲くのですが、庭師にひとこと断りを入れて摘みにいきます。その日の朝に摘んできたばかりの紫陽花をエグゼクティブラウンジに飾ることができるというのは、とても贅沢なことだと思います。お客さまに、「このお花は、今朝庭で摘んできたのですよ」とお伝えすると、日本のお客さまにも海外のお客さまにも、そこに価値を見出していただくことができるようです。

塩川:日本庭園のほかにローズガーデンもありますが、こちらにまつわるエピソードをお聞かせいただけますか?

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

佐藤:紫陽花の話の中で申しました庭師のチームは、実はホテルを“卒業”したスタッフを中心に編成されています。いずれも生粋のホテルマンなのです。ローズガーデンは初夏と秋には真っ赤なバラが咲き、早朝に行きますとまるで香水瓶の中にいるかようないい香りがするのです。そのローズガーデンを守っているのは、バラの専門家と庭師のチームで、お越しいただくお客さまに幸せになっていただきたいという思いが非常に強いのですね。「エグゼクティブハウス
禅」のお客さまからも、「ローズガーデンに散歩に行ったら庭師の方がいろいろ説明をしてくれた」という声をよく聞きます。

塩川:ホテル業界は転職される方が多いイメージなのですが、リタイアまで勤め上げられて、さらにその後も携わっているというのはとても興味深いですね。

佐藤:そうですね。ホテルでのキャリアの最後には、お客さまにも社員にも愛された庭に携わりたいという社員が多いようですね。そういう意味では日本庭園やローズガーデンは、ホテルニューオータニを形づくる非常に重要な意味合いがあると思っています。

目指すのは、「自由なホテル」

塩川:「エグゼクティブハウス 禅」は、引き続き、ホテルニューオータニを引っ張っていく立場になると思うのですが、どういう方向に歩みを進めようと考えていらっしゃるのか、未来の話をお聞かせいただけたらと思います。

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

高畑:都内に住んでいてご自分の楽しみとして月に4〜5回、都内のさまざまなホテルに宿泊されるというお客さまがいらっしゃったのですが、一度「エグゼクティブハウス
禅」に宿泊してからずっと「禅」がいいと言ってくださりました。その理由は、「ラグジュアリーな空間の中で、スタッフがみんな楽しそうに働いていて、とても素敵な笑顔を見せてくれるからだ。」とおっしゃられたのです。職場環境がよくなければ、お客さまに笑顔を向けることはできません。コンシェルジュの力を強めるなど、いろいろと大事なことはあると思いますが、何よりもこのホテルニューオータニならではのあたたかみを大切に、更にお客さまにラグジュアリーな雰囲気を楽しんでいただけるよう努力していきたいと考えています。

塩川:お客さまがまた泊まりたいと思われるかどうかは、人とのつながりによる部分がとても大きいと感じます。お客さまに愛されている旅館さんやホテルさんは、人同士のつながりを大切にされている印象ですね。

佐藤:今の高畑の話が全てなのですが、ホテルは結局、人だと思うのです。人がホテルをつくるのですね。どういうお客さまにお選びいただいて、どういう風にホテルを愛していただけるかというのが1つ。あとは、スタッフです。私が支配人のときも、自分がどうスタッフに接したら、そのスタッフがどうお客さまに接してくれるかということを常に考えていました。1人のとても優秀なスタッフがいるよりは、「エグゼクティブハウス
禅」というチーム全体で、お客さまがいつ来られても同じような安心感をご提供できるかが、とても重要だと思っています。

塩川:まさに「人がホテルをつくる」ですね。

佐藤:私が支配人に就任したときには、まずは自分がお客さまにご認識いただくことに注力し、2年目にお客さまの声をもとにして特典を改定しました。3年目に行きついたのは、どのようなチームを形成して、「人」によってお客さまにご満足いただくかということです。次々と新しい立派なホテルができ、最新のテクノロジーを擁したホテルができていくのですが、新しいものばかりを追い求めても、日々追い付き追い越されることの繰り返しだと思います。一方で、スタッフの経験やチームの総合力というものは、時の流れと日々の試行錯誤の蓄積によってこそ厚みを増すものだと思います。高畑も、10年間のコンシェルジュの経験を通してその大切さを良く知っていますので、一番大切なことをバトンタッチできるだろうと思っています。

塩川:これから、2020年の東京オリンピックに向けて外資系のラグジュアリーホテルの参入が予想されます。その中で、国産のホテルとして今まで以上に磨きをかけていく部分ですとか、外資系ホテルとの差別化を図られたい部分はありますか?

佐藤:今いらっしゃるスイートルームのバスルームやベッドルームからは、庭の土や、池に鯉が泳ぐ様子も見ることができます。この環境は、1万坪の日本庭園を擁するホテルニューオータニならではであり、すぐにつくることはできないものだと自負しています。やはりその部分を発信しつづけて、差別化をしていきたいと思っています。

塩川:この日本庭園を、ホテルの象徴としてより発信していかれるのですね。

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

佐藤:海外から「エグゼクティブハウス
禅」にお越しいただくお客さまの中には、桜の満開の時期を予測して1年前から予約をくださる方ですとか、実際にいらして、桜が満開になるまで滞在を1週間延長されるなどといった優雅な方もいらっしゃいます。海外の方が桜をそこまで喜んでくださることは日本人としてとても嬉しい気持ちになりますし、桜をなるべく見ていただきたい、愛でてほしいという気持ちになるのですが、同じように、ホテルニューオータニの庭を愛で、ご評価いただけるということは、私どもにとって、とても誇らしいことです。同時に、これまでホテルニューオータニを愛して育ててくださった日本人のお客さまも大切にしていきたいですし、ブランディング―お客さまとのお約束はずっと守りたいと思っています。

塩川:既存のお客さまも大切に、これからもホテルニューオータニを、そして「エグゼクティブハウス 禅」をつくっていかれるのですね。

佐藤:海外のお客さまにホテルニューオータニの「エグゼクティブハウス
禅」をご評価いただくことを、日本のお客さまと一緒に分かち合える、そういったホテルでありたいです。今回の支配人交代の意味もそこにあると思っています。ブランディングとは、既存のお客さまや海外から来られるお客さまの「ホテルニューオータニに泊まったらきっとこんな滞在ができるのではないか」という期待感にお応えすることです。私は、新しい部署でそのブランディングに注力し、一方で高畑は今までの経験を活かして、国内外のお客さまの快適な滞在のお手伝いをする。そして、より多くのお客さまに、長くご愛顧いただける「エグゼクティブハウス
禅」をつくりあげることがミッションだと感じています。そこに、人として、チームとしての奥行きを出していけたらいいですね。

塩川:それぞれのミッションをそれぞれの立場で遂行され、より大きな目標にチャレンジしていかれるということですね。

佐藤:ホテルニューオータニは、創業当時から常に「NEW」、つまり新しいことへのチャレンジを続けています。日本初のユニットバスの導入など、建設の工程にもイノベーションがあったと思いますし、海外から来られたすべてのお客さまに富士山を見せたいという想いから、創業者・大谷米太郎がスカイラウンジ(現:「VIEW&DINING THE
Sky」)を回転するレストランにしたという発想も「NEW」だったのです。もともとそうしたチャレンジを重ねてきたDNAといいますか、お客さまに喜んでいただけるならやってしまおうという気風が、私どもホテルにはあるのです。「エグゼクティブハウス 禅」にもこれまでのホテルニューオータニの歴史を受け継ぐ役割と、常に新しいことを取り入れホテルのブランドを磨き上げていく役割とがありますので、そういった意味で今後、高畑が率いる「エグゼクティブハウス
禅」が東京オリンピック・パラリンピックに向けて邁進できるのではないかと感じています。

塩川:お客さまに対するおもてなしの気持ちは変えずに、やり方を変えていくことは厭わずに進んでいくということですね。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

写真:川田 悠奈 / 文:宮本 とも子

※この記事は2017年に取材・制作したものです。

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅  2代目支配人 佐藤 智子

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

2代目支配人 佐藤 智子

2001年4月、株式会社 ニュー・オータニ入社。同年8月よりフロントオフィス課に勤務。2007年「エグゼクティブハウス 禅」の立ち上げに参画した後、宿泊営業部 法人マーケット担当を経て、2013年「エグゼクティブハウス 禅」2代目支配人に就任。2017年5月よりマネージメントサービス課にて、ホテルのブランディングを担当。

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅  3代目支配人 高畑 真紀

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

3代目支配人 高畑 真紀

オーストラリアで4年間に亘り、旅行会社の現地係員を務めたのち、日本に帰国。株式会社 ニュー・オータニ入社後は10年間コンシェルジュ経験を積み、2017年に「エグゼクティブハウス 禅」3代目支配人に就任。

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

ホテルニューオータニ エグゼクティブハウス 禅

東京都 > 六本木・麻布・赤坂・青山

2007年に誕生し、2020年・2021年と2年連続で「フォーブス・トラベルガイド」の格付けで最高評価の五つ星を獲得しました。都心ながら豊かな自然に囲まれたこの場所で愉しめるのは、「新しいラグジュアリーホテル」の体験です。侘び・寂び、墨や和紙、和色を用いたインテリアが、開放感と安らぎを同時に演出します。